「長谷川裕也の熱烈靴磨き道場」鏡面手直し術の巻

シリーズでお届けする「長谷川裕也の熱烈靴磨き道場」。第18回目は、靴磨き店を利用する方はみんなが困っているであろう鏡面磨きした後のメンテナンスについて、長谷川裕也が熱く語ります。

私自身も日々お客様の靴を磨きながら「この後自分で磨けないな〜」や「磨いてもらった後はどうやってお手入れすれば良いですか?」などよくご質問いただきます。そうでなくとも表面のワックスが削れた鏡面仕上げの靴を見ると鏡面手直し術の重要性を感じます。

人によっては鏡面仕上げだと傷が目立つからと鏡面磨き自体が嫌になってしまった。という場合もあるので、私たち靴磨き職人がアフターメンテナンスについてはしっかり伝えていかなければと責任を感じております。

それでは早速その鏡面手直し術についてお話ししていきましょう。鏡面仕上げの靴は一日履くと気を付けていても多少の擦れなどは出てしまいます。そういったちょっとしたスレの場合は山羊毛ブラシを使った鏡面手直し術です。まずは山羊毛ブラシで擦れた部分をブラッシングします。

この時に傷が消えるように少し圧をかけてスレが目立たなくなるまでブラッシングします。イメージとしては傷をぼかすような感じでブラッシングすると良いでしょう。

すると傷がかなり目立たなくなってきます。そうなったら山羊毛ブラシの毛先に水を1、2滴つけます。ブラシ全体に広がるように水をつけたら手のひらで少し馴染ませてあげましょう。少し濡らした山羊毛ブラシで再度ブラッシングをすると鏡面仕上げが復活してきます。水に反応して少し曇ったワックスがまた光り出すのです。これで完了です。

この鏡面手直し術はぜひ履いた後は毎回行ってください。そうすることで長く綺麗な状態を保つことができます。ただしこの方法では手直しできない状態の靴はまた違う方法の鏡面手直し術があります。それはクリームを使った鏡面手直し術です。

鏡面の膜が深く削れてしまっていたりする場合は全体的に鏡面の膜を一度溶かして馴染ませる方法で手直しします。その際にワックスを使うのも良いのですが少しコツがいるのと、厚塗りになってしまう可能性もあるので比較的簡単なクリームによる鏡面手直し術を伝授します。

この方法で使うクリームは油性クリームを使います。今回はサフィール社のクレムを使用します。油性クリームはワックスとの馴染みがよく手直しが簡単だからです。

まず指に布を巻いて(鏡面磨きをする際に巻く方法がベスト)クリームを取ります。手直ししたい鏡面磨き部分にクリームを塗り少しだけ圧をかけてクルクルと円を描きながら鏡面の幕を少し溶かしていき傷を目立たなくさせます。

その後、お水を一滴つけてそのまま鏡面磨きの工程に入ります。油性クリームの場合、ワックスと成分はほぼ一緒なのでお水をつけて磨いていると鏡面仕上げになってくるのです。そのまま鏡面仕上げが復活すれば完成です。

これはとても便利な方法なのでぜひみなさまには取り入れていただきたいと思います。クリームで行うというのも革に優しいのでワックス厚塗りしていく訳ではないので気分的にも良いですね。

それでも手直しできないくらい鏡面仕上げが削れたり荒くなってしまった場合はいっそのこと全て鏡面を除去して再度やり直すのをお勧めします。「THE CLEANER for Mirror Shine」を使用して除去すれば簡単に取れます。とても強力なクリーナーですが革には優しいペーストタイプなので安心です。その場合は靴全体をやる必要はなく、手直ししたい部分だけを再度一から鏡面磨きを施すで良いでしょう。

というように鏡面仕上げのスレや削れの度合いによって鏡面手直し術も3段階に分かれます。

1.山羊毛ブラシによる手直し
2.油性クリームによる手直し
3.一から鏡面し直し

鏡面磨きは仕上がった瞬間が最高の光沢です。そこから時間が経過するごとに艶が落ち着いてきて光は鈍くなります。実はそのくらいが一番魅力的なんではないかなと思っています。

散髪と一緒で切り立てが状態として一番整ってますが、髪を切って1、2週間後くらい経って少し伸びてきたくらいが馴染んできてしっくりきます。鏡面仕上げも少し鈍くなってきたくらいがかっこいいと思うので手直し術でよりかっこいい鏡面にしていってください。

ということで今回の指導はここまで!それではまた次回!押忍!!

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