「長谷川裕也の熱烈靴磨き道場」其の拾参

シリーズでお届けする「長谷川裕也の熱烈靴磨き道場」。第13回目は、靴磨きをする上での「第12工程目」について。長谷川裕也が熱く語ります。

いよいよ靴磨き選手権2023が来月からスタートします。1st Roundは【9・9 大阪:梅田ホール】【10・7 東京:阪急メンズ東京】で開催します。そこで勝ち抜いた東西の強者12名が【11・18 東京: 銀座三越】にて決勝を行います。

誰が日本一靴を磨くのが上手いのか決める大会。大会発起人として3年ぶりに復活する靴磨き大会を最高に盛り上がるように尽力しますのでぜひ皆様もご声援をお願いいたします!

そんなこともあり靴磨きラバーの間ではますます靴磨き熱が上がりまくりな訳ですが、今日は第12工程目の「水をつけて鏡面磨き」を指導していきます。前回まではワックスのベースを素手で作り、指にネル生地を完全に巻き付けたところまでやりました。ここからが靴磨き工程で一番の魅せ場であり花形です。

まずこの工程を行う上で持っておきたいのがハンドラップです。昔はワックスの缶の蓋に水を入れてそこからちょこちょこ濡らして鏡面磨きをしていた方が大半でしたが、その方法だと水をつけ過ぎてしまったりすることが多く失敗の原因になります。ハンドラップで水を補充していく方法だと水のつけ過ぎを防ぐのでお勧めです。

では早速ネル生地を濡らしましょう。そこで超重要な濡れ加減についてですが、もう片方の指に水を1滴ずつ取り4.5回(4.5滴)つけて濡らしましょう。このくらいの濡れ加減をしっかり覚えておいてください。

僕は5滴くらいの多めに濡れているのがちょうど良いのですが、ビギナーは4滴から始めた方が無難です。

そもそもなぜ布を濡らす必要があるのか?それは布を濡らしておくことで水分が潤滑油となりワックスを膜にしてくれるのです。逆に濡れていないと布が滑らなくて乾拭きになってしまうのでワックスが剥がれ落ちてしまいます。

なので常に適度に濡れた状態(最初の4、5滴くらい)に保ちながらワックスを塗布していきます。

適度に濡らしたら少しだけワックスを取ります。あまり付け過ぎてしまうとワックスによってベースの膜が溶けてしまうので写真くらいに指先に色がつくくらいの少量で大丈夫です。

濡れた布にワックスをほんの少しだけつけたらベースを作った部分をまず磨いていきます。一気に光ってくるのでびっくりすると思います。

曇っていたベースが一気に膜となって光ってきます。この時に力加減は優しく磨きましょう。力はそんなに入れずにATMのボタンを押すくらいの力というか、猫の額を撫でる時くらいの力というか、とにかく優しく圧力をかけます。

すると塗っていたベースのワックスがピカッと光って”第一膜”が出来ます。

土踏まず部分など磨きにくいところも指を巧みに使って隅々まで革を触るように磨いていきましょう。2本指の端など使いクイクイと指を入れていく感じです。

ここは言葉だと表現しにくいですが隅々まで磨くように意識です。

またつま先も隅から隅まで優しく磨いていきましょう。靴の顔として一番光らせていく部分なので満遍なく磨きます。

この際にシワができる部分に塗り過ぎると割れてくるのでシワ部分は避けながらグラデーションを作るように薄塗りしていきましょう。この辺りは大分マニアックな部分なので一通り終わって番外編でお伝えするようにしますね。

そうこうしているうちに徐々に布が乾いてくるのでタイミングをみてまた1、2滴水をつけて最初の濡れ加減に戻します。イメージは1分に一回水分補給するイメージです。

濡らし過ぎると徐々に革が濡れてきてしまうので濡らし過ぎは厳禁です。かといって乾いてくるとワックスを乾拭きして艶が消えてしまうので常に最適な濡れ加減というのを身体で、指の感覚で習得してください。

つま先とかかとを光らせるだけだと光が分断してしまうのでコバの上も細く光らせて光沢を繋いでいきます。そうすることで靴全体が光り輝き統一感が出ます。下から照明を当てられているような立体感が出るのはこのコバ上を光らせるからこそなのです。

ある程度つま先、かかと、コバ上を光らせて全体が強く光ってきたらヴァンプ部などのシワの部分にもワックスを塗布していきます。ワックスをたっぷり布に取ったら2、3度全体にワックスを塗ります。これは長谷川流の本領発揮という部分だと思うのですが全体的に濡れたようなオイリーな光沢を出すために最後に全体的にワックスを塗るのです。

そうすることで鏡面磨き部分以外もじんわりと重い光沢が出て靴全体が妖艶な雰囲気が出るのです。

ただこれを読んでいる方で「シワにワックス塗ったらダメなのでは?」や「ワックスをシワ部分に塗るとひび割れない?」なんて心配する方がいると思います。

答えは「安心してください、割れませんよ。」と、とにかく明るい長谷川は自信を持って言います。そのあたりは次回の道場で秘技をお教えします。

というわけで今回は鏡面磨きの光らす部分を指導しました。

おっといけない!!この部分で大切なところを伝え忘れていました。このワックスつけて水っていうのをどの程度繰り返していくと良いのか。それはおおよそ10〜50回くらい繰り返すと思っておいてもらえると良いかもしれません。

きめの細かい革は10回ほどワックスを塗布していけばピッカピカになります。革の目が荒いものだと50回くらい必要な場合もあります。ワックスの状態によったり技術によってはそこまで必要ないってこともありますが最高に輝かすにはそのくらい必要と思っても良いと思います。顔が映るまで頑張ってみましょう。

次回は第13工程目「ヴァンプを輝かす」です。真夏はロウも溶けやすく艶が消えやすい時期なのでいつもより強めに光らせてギラギラ輝く太陽に負けない足元にしていきましょう!ではまた次回、押忍押忍押忍!!!

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