「靴磨き職人探訪記」 part12 Mr,Hruki Abe(Burie)

シリーズでお届けする「靴磨き職人探訪記」。世の中にはたくさんの素敵な靴磨き職人がいる!第12回は広島で活躍されているBurie代表の安部春輝さんです。靴磨き選手権大会2023のFinalにも駒を進めた実力者でありそのアグレシッブな動きは靴磨き界屈指のビジネスマンです。

・安部さんが靴磨きを始めたきっかけは?

靴磨きを始めたきっかけですが、元々は僕が広島で路上ライブをやっていた頃に遡るんですが、路上で演奏しているときに大阪のミュージシャンが来ていて、メジャーデビューもしていためちゃくちゃ歌が上手い人だったんですけど、「うまーッ!!」て感動して観ていたら、その人の格好がRED WINGのエンジニアブーツを履いてダメージデニムでTシャツという格好でライブをやっていたんですが、それがめっちゃカッコイイってなって。それが革靴との衝撃的な出会いでした。

なので革靴との出会いはフォーマルではなくブーツから入ったんですよね。それがきっかけで色々と革靴にハマって調べていってTRICKER'S買ってみたりALDEN買ってみたりしながら靴磨きに出会ったのはYou Tubeで明石さんの動画を見た時なんですよ。明石さんがBrift Hから独立した後の動画だと思いますがドキュメンタリー番組の動画を観て靴磨き職人っていう仕事を知ったんです。

それでFacebookで明石さんに友達申請して連絡を取り、東京に会いに行って一緒に呑みに行っただけなんですけど色々とお話をして靴磨き職人になりたいなって本格的に思うようになりました。それが22、23歳頃だったと思います。

仕事で言いますと、障害者施設で働いていたんです。なので意外にも保育士と幼稚園教諭の資格を持っているんですよ(笑)。僕は島根の飯南町っていうかなり田舎出身で誰も革靴とか履いている人もいないような町で生まれ育ったのですが、とにかく地元を出たくて広島に出るために保育、介護福祉の専門学校に行ったんです。そこを卒業してから3年間は施設で働いてました。

そんな中で靴磨き屋はまだそんなにみんなもやっている感じではなかったのでこれなら自分でもチャンスがあるんじゃないかと思い、2016年にブリエを立ち上げました。その翌年には広島駅前の蔦屋家電の中で92(ナインティーツー)という店名を変えて移転しました。元々蔦屋家電でお店を始めることが決まっていたのでそれに向けて訓練も兼ねてブリエをOPENさせたんです。なので1年間プレオープンのようなイメージでやっていました。

2019年に92のパセーラ店という街の中心地に2号店をOPENさせたんですが数ヶ月してコロナになってしまったんです。コロナ禍でパセーラが臨時休業してしまったので営業ができなくなってしまいどうしようかと思っている時に、「べっぴん店」といううちがSaphirのクリームなどを卸をしている鞄屋さんがあるのですが、そこで靴磨きをしたら面白いかもねということになり、インショップで”べっぴん店”が出来ました。

本通りという広島の中心地にある老舗のバッグセレクトショップなんですがインショップが好評だったのでそのままパセーラ店を閉めて今も営業しています。

そんな中で破格のサブスクの”靴磨き放題サービス”月額15,000円を始めました。これはゴールド会員という会員制のサービスなんですが、何足でも磨きに来て良いですよ〜っていうのと、会員さんだったら”これ安く買えますよ”とか会員サービスに力を入れていたので、せっかくだったら会員制の靴磨き屋にしようとなり、ブリエが復活して今の店舗になったんです。

それが2022年の4月です。そのタイミングで福岡の岩田屋の靴売り場にも出店し、二店舗同時にOPENしました。たまたまですが。

ブリエは基本的に会員制ですが会員のご友人とかであればご利用はできるようになっています。会員数は100名弱ですが非会員さんは有料でご利用いただいてます。会員になるとコーヒーやお茶など飲み放題ですし仕事などもできるコワーキングスペースみたいになっているのでくつろげるようにソファなども置いています。なので普通に仕事しにくる方とかいますよ。

良い店なんですが今も期限付きでお店はやっているのでいつかは移動させなくてはいけないんですが、本当はこんなに目まぐるしく動きたくないんです。でもやっと次は腰据えて店舗が出来そうで、新しいプロジェクトでアートビルっていうのを広島の中心地でPARCOの近くなんですが、そこに5階建てのビルがあって元々医者兼画家が住んでいたビルを改装して何かできないかって相談を受けて、ここが画家の物件だったのもあり設備上アトリエ機能として秀逸なビルなんですよ。

それを活かしたいなとも思って僕の友人で村上くんっていうルーブル美術館でも展示されたことのある素晴らしい画家の友人がいるのですが彼のアトリエをまずは作るところから始めています。あとは2階に飲食店が入ることが決まって1階の駐車場をブリエが入る予定なんです。そこに靴磨きだけでなくRENDOの靴やスーツなどオーダーできるようなセレクトショップのような店舗にしようと思っています。そこは会員制ではない店にしようと思います、VIPルームは作ろうかな〜とは考えてはいますが。早ければ2024年の2月には移転できれば良いかな〜と計画してます。

話は変わりますが僕はプレーヤーが増えればマーケットもできてくると思っていて、靴磨き屋が増えれば靴を磨く人が増えると思うのでどんどん靴磨き屋を増やしたいんです。そのために靴磨き職人用の年金とか作って安心して職人になれるようなインフラとか作るようなことは将来やっていきたいなと思っているんです。

靴磨き業界が盛り上がる為には掛け算をどんどんやっていけたら良いなと思うので、モデルが靴磨くっていうイトさんみたいな女性もいるのも素敵だなと思うのでいろんな掛け算をしながら業界を大きくしたいと思っています。靴を磨きたいって思おう人をたくさん増やしたいですよね!

・安部さんの靴磨きのこだわりは?

技術的なこだわりですとその人に合った磨きをすることですね。光らすだけではないってことですね。昨日もお客様で光らすのは好きじゃないってお客様の靴を磨きましたが、プロとしてその人に合った磨きをすることを大切にしています。

あと鏡面磨きに関してはグラデーションはかなり意識はしています、ただ一番大切にしているのは長く履けるように靴を磨くことですね。なのでしっかりクリームを入れるのを大事にしています。

・安部さんといえば日本でSaphirの認定するシューケアトレーナーの第一号ですよね。

はい。そうなんですが技術というよりは知識をしっかり持ってやっているという感じです。なので靴磨きの技術自体は全国の靴磨き職人からインスパイアされたりということの方が多いですかね。

Saphirだからどうっていうのは正直あまり僕はないですね。製品はとても気に入っているので基本的にはSaphir 製品を使いますが技術はいろいろな方法で学んでいます。

・印象的なお客さまとかいらっしゃいますか?

そうですね〜やっぱ広島ということで、広島カープの菊地良輔選手という日本代表の野球選手がいらっしゃるんですが、その方はRENDOの靴を作ってくれたり磨きにいらして下さいますし、サンフレッチェのサッカー選手とかもよく来てくれますね。そんな繋がりで選手やコーチの方々が来てくださいます。あとは経営者のお客様も多く地元の名士の方々もお越し頂きます。

そんな方々とお話ししていて印象的なのが「良い革靴をいつ買うか?」ということについてなんです。そういった経営者は大体50代以上の方々が多いのですが皆さん「これもう20年以上履いているんだよね」とおっしゃる方が多く、20年前というとその方が30代とか若い時に購入しているってことになるので、皆さん頑張って良い靴を買っているんですよね。

足元に投資をしてケアしながら長く大切に履くことが大切だよってことを皆さん口をそろえておっしゃるんでそういったことはとても勉強になりますし、若い世代に伝えていきたいなって思います。時計とかもそうですね、皆さん20年30年使って無理してでも良いなって思うものは買うっていうのが大事なんだなと思います。

安部さんとは独立するかしないかという時からのお付き合いですが当時から常に前向きで情熱を持って行動しまくる姿勢にいつもすごいな〜と拝見をしていましたがお話を聞くと業界を盛り上げようという想いの強さに感銘を受けました。

会員制の靴磨きやサブスクの靴磨きたい放題などをきちんとビジネスとして成功させられているのは安部さんの人間力あってのことだと思います。これからもビジネスマン安部さんとしても今後の動向が楽しみなお話でした。

広島に行かれた際は皆さんもぜひBurieの新しい店舗に行ってみて下さい、そして11月18日の靴磨き選手権のファイナルでの活躍もお楽しみに!!